1人が本棚に入れています
本棚に追加
自然と涙が込み上げてきた。
歌うことは自分の全てで、存在意義だった。
歌うために生まれてきたと、生きているとさえ思っていた。
それが今、歌う場所を奪われ、人々の関心は薄れ、歌うことで命を縮めるという皮肉。
もう自分でどうしたいのか、どうすれば良いのか分からず、今頭にあるのは彼に会いたいということ。
けれど、彼に会ってどうするのかなどとは全く考えておらず、ただ本能のみで街をさまよっていた。
そんな座り込んだままの私へ、ゆっくりと手が差しのべられた。
私はその手に気がついて、視線を上に上げた。
最初のコメントを投稿しよう!