~prologue~しょっぱい雨と向日葵の飴

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近くで声がしたので聞こえた方に反射的に顔を向けた。 こっちを見ていたのは同じ年くらいの子。 僕に言ったのかな? 首だけ動かして見渡す限り僕の周りには3人しかいない。 それにみんな楽しそうに笑ってるということはやっぱり僕だよね。 「何で泣いてるの?」 今度はちゃんとその子に目を向けると、もう一度同じ質問をしてきた。 「泣いてなんか…ないよ?疲れて休んでただけなんだ」 たぶん笑って話せてるよね? そんな僕を見て何を思ったのか、その子は持っていた鞄を探り何かを取り出した。 「これ、元気が出る飴なんだ。あげるよ。騙されたと思って食べてみて」 差し出された手の上には向日葵の絵が描いてあるオレンジ色の飴が1つ。 「…ありがとう。いただきます」 不思議に思いながらもそっと飴を取り、包みを開けて口に入れた。 味は包みの色と同じオレンジ。 僕も見たことある普通の飴玉のはずなのに、何故か心が温かくなった。 「おいしい……」 そう言ったと同時にこらえていた涙も溢れだした。
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