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「昴兄!こっちだよ」
大きく手を振っているその子の視線の先を見ると、眼鏡をかけた優しそうな雰囲気の人が走ってくるのが見えた。
「優樹(ユキ)、勝手にどっか行っちゃダメって言ったでしょ?」
あ、優樹って名前なんだ。
聞く前に聞けたその子の名前。
「ごめん。もう帰るの?」
「うん、そろそろ帰るよ。…ん?そっちの子は?」
昴兄と呼ばれたその人とふと目が合って、僕の存在に気づいたみたい。
「えっと、僕は…「友達だよ!」え?」
どう言えばいいか悩んでいたら横から優樹ちゃんの声がはいった。
「そっか、優樹と遊んでくれてありがとうね」
そっと頭にのせられた手は一瞬で離れたけれどすごく優しいものだった。
「その、僕も優樹ちゃんと話せて良かったです。もっとお菓子が好きになれました」
照れまじりの笑顔で言うと
「それは良かった。また優樹と遊んであげて」
昴さんも微笑みながら返してくれた。
「はい」
「じゃあ優樹帰ろうか。母さん達が待ってるよ」
「じゃあ、またね!」
至近距離なのに大きく手を振り遠くなっていく優樹ちゃんに
「うん、またね!」
僕も人混みの中に消えるまで大きく手を振った。
「悠希(ユウキ)!」
ふっと一息ついたところで今度は自分の名前を呼ばれた。
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