「プリン、食べますか?」

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「プリン食べますか?」 「え?」 想像もしていなかった一言に、思わず声を上げた。 同時に顔を上げると、その人は、まるでそれが自然なことだとでも言うように、微笑んだ。 「晴海くんが大学に行く前に作ってくれたんですけどね、今日に限って甘党の客が1人も来なくて。 で、貴女の顔を見たら、プリン食べたら良さそう、と思ったので」 『晴海くん』や『甘党の客』が一体誰の事を言っているのか、そもそも『プリン食べたら良さそうな顔』とはどんな顔なのか、皆目見当がつかなかったが、相手の独特のペースに乗ってしまったのか、つい、 「あ、はい、いただきます」 と、答えていた。 眼鏡の奥の瞳が、穏やかに弧を描く。 「じゃあ、今用意しますね」 カウンターの奥へと引っ込んで行く背中を眺めたあと、視線を巡らせて店内を見渡した。 決して広くは無いけれど狭過ぎもしないホール席。 ハイスツールの並ぶカウンターと、その背後にある色とりどりのカップの収まる食器棚。 全体的に、落ち着いた色調の内装。 最近ブームになってきている『カフェ』とは違う。 言ってみれば、そう、 『喫茶店』とか、『喫茶室』なんて呼び方の方がしっくりくる。 そんな場所で、なぜ今、『本日のブレンド』をいただいているのかと言うと…。
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