「プリン、食べますか?」

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・ ・ ・ 会社を辞めてから、しばらく何もしないで過ごした。 まさに、家事手伝い的な生活。 両親は、余計なことは何も言わなかったが、甘やかしてもくれず、 「家にいるのなら、掃除や洗濯は担当してね」 とか、 「梅雨だからって、家に引きこもらないで、外に出て運動しなさい」 とか、まるで学生時代のような事を言われた。 腫れ物を扱うように接してくるより、よっぽどありがたい。 そんな親の前では、こちらも自然体でいられる。 「分かったわよ…もう」 我ながら面倒くさそうな返事をして、傘を携えて家を出た。 雨は一時的にか上がっていたが、後々傘をさすのが億劫なので、雨に濡れることなく歩き回れる中央通りの商店街に来た。 ここは数年前、駅前から続くペデストリアンデッキに繋げる形でまっすぐ通りを覆うアーケードが掛けられた。 すると、もともと学生が多い街だからか、通り沿いに若年層が好みそうなカフェや雑貨屋などが増えて来て、中々楽しいエリアになったのだ。 本屋やアクセサリーの店をはしごして、そろそろどこかで休憩しようかな、と店を探している時だった。 ちょうどアーケードの中程にある、電話ボックスの前を通りかかった。 ここには以前、全部で3台のボックスが並んでいたが、今はもう、1台のみになっていた。 携帯電話の普及の影響だろう。 この残り一台だっていつまであるか分からない。 それだけ、最近使っている人を見ることがない。
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