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「なのにさ、
晴海ちゃん、自分を卑下するようなことばっかり言ってぇ。
『彼氏』って言ってくれた時、驚いたけどそれ以上に私、
嬉しかったんだから…っ
なのに、ウソだとか…
その後すぐにウソじゃないとか…
もう、わけわかんないーー!」
「さ、さっき悠里が付き合ってるってあいつに言ったのは、てっきり話合わせてくれたのかと…」
「違うー!」
狼狽える晴海くんに、もはや半切れ気味な悠里ちゃん。
ここ数日の緊張で感情が高ぶっているのかもしれない。
眉をハの字に下げた晴海くんが、何か言いたそうに私の顔を見た。
私はそれに、首を軽く傾げた後、『どうぞ』と、手を前に出す仕草をした。苦笑いを浮かべながら。
何を今さら。
私のことはお気になさらず。
「悠里、聞いて」
ベソをかいている悠里ちゃんを、晴海くんがその大きな腕で優しく包む。
「改めてちゃんと言うから。
俺、悠里が好きなの。
付き合ってくんない?」
「晴海ちゃ…うん」
すっぽりと晴海くんの腕に埋まっている悠里ちゃんの顔が、ふわりと柔らかく綻ぶ。
それは数日ぶりに彼女に笑顔が戻った瞬間に違いなかった。
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