「付き合ってますけど、何か?」

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「でもさ」 カップを布巾で磨きながら私と晴海くんの掛け合いを見ていたマスターが静かに口を開いた。 「お節介だとは思うけど。 その、お兄さんの塚本くんとは連絡取らなくていいの?」 「へ? いや、元よりあいつにチクろうとは思ってなかったし… まあ、またあの弟が近づいて来ることがあったらその時には…」 「そうじゃなくて。 ラグビー辞めて以来会ってないんだろう? いきさつを知らないで差し出がましいかもしれないけど、会えなくなって残念に思ってるのかもしれないんじゃないかなって思って。 君も相手も」 「あ、いや…」 晴海くんが面食らった様な顔で言い淀む。 それは…私も気になっていた事だ。 いつも前向きで明るい晴海くんに、見ない様にしている過去があるなんて、信じられない。 「まあ、その…」 顎を人差し指でかきながら、少し考え込んでいた晴海くんが口を開いた。 「……実は自分でも、どうしようか迷ってて。 正直ね、忘れてたって言うのは大げさな言い方じゃなくて本当なんですよ。 最初は、辛くて辛くて考えない様にしてたんですけど、頭の中から追い出したらその内に日常に流されて思い出すこともなくなって。 それが、あの塚本弟に会って、本当に久しぶりに思い出して。 でも、今更…」 言葉を詰まらせ、少し表情を歪める晴海くん。 ラグビーの仲間たちとどの様に離れていったかは分からないけど、決してそれが清々しいものではなかったのだと窺える。 マスターは磨いていたカップ達を棚に一つ一つ丁寧に並べ終わると、こちらに向き直った。
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