「プリン、食べますか?」

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同期入社の市原とは付き合って2年になる。向こうは営業で、こちらは営業事務。 組む仕事が多く、一緒の時間が長いこともあり、ごく自然に付き合うようになった。 そして去年の冬、これまたごく自然にプロポーズされ、ごく自然に生活を共にすることになるのだろう、と思っていたのだけれど。 変化は、年度末に訪れた。 ウチの会社が業界大手の傘下に入ることになり、経営陣が一新された。 親会社から来た役員の1人、新しい専務。 その一人娘の目に、市原が止まったのだ。 新体制記念日パーティーの場で、その時既に私達の中は社内に周知されていたので、2人で挨拶をした。それにも関わらず、翌日から彼女の猛烈なアプローチが始まった。 最初はごく迷惑そうに、私に愚痴をこぼしていた市原だったが、いつの頃からかこの件に関して口を閉ざすようになった。 あんまり話題にするのも、不機嫌になるだけだろうと、こちらからも口には出さないでいたのだけど。 「ごめん、千紗」 部屋に入るなり開口1番、そう告げられたのは先月の事だ。言われた瞬間、何も説明が無くても、分かってしまった。 そう、許したくは無いけど、理解してしまった。
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