「プリン、食べますか?」

5/19
前へ
/371ページ
次へ
そんな訳で、大きなダメージは受けないと思っていたのだが、1番堪えるのはこれ。 事情を知った、周りの人々の反応。 私は大丈夫、私はこれまで通り、と平常を保とうとすればするほど、同僚達の表情が曇った。 これでは、自分がどんな顔をして、どんな言葉を発すればいいのか分からなくなってしまう。 そもそも、私ってどういう笑い方してたんだっけ。 市原は、専務特命の仕事が中心になったようで、滅多に顔を合わせなくなった。 仕事も、目標と憧れとライバルを同時に失ってしまったような気がして、何を拠り所にしていいか分からなくなってしまった。 普通の自分が、完全に見えなくなる前に会社を辞めた。 ちょうど、梅雨入りが発表された日だった。
/371ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3006人が本棚に入れています
本棚に追加