/142ページ
「さすがに、こんなとこまでは来ないか…」
思わずつぶやいてしまったのは、捜索が学園の敷地の隅、相談棟周辺まで及んでしまったと気付いた時だった。
寮に入っているクラスメイトが、部屋で飼っていた子猫(もちろん寮則違反。そして今までバレなかったということは、両隣の寮生もグルなのだろう)が逃げ出したと言う事で、その捜索を手伝っているのだ。
友人数人で、手分けして探そう、ということで探しているうちにこんなところまで来てしまった。
「なにげに初めてなんだよねー、ここまで来るのは」
誰が聞いているわけでもないのだが、猫の気配どころか人の気配も感じられないのが流石に薄気味悪くなってきて、声に出してしまう。
…ぐるりと一周して、何も無かったら今日のところはもう諦めよう。
本校舎側から壁伝いに回り込み、旧校舎を裏へと回る。
「わ…」
びゅうと吹き付ける風。
楓ケ坂を登り切った高台の、1番ヘリに立つこの相談棟は、実は全敷地内で1番景色がいいのかもしれない。
そんなことを考えながら、歩いているとーーーー
あ…
今…
風の音にかき消されながらも、確かに猫の鳴き声が。
耳を澄ませながら、ゆっくりと歩を進めていく。
しかしなかなか声の元には辿り着かず、結局1番はじまで来てしまった。
一箇所だけ、裏口らしきガラス戸が、開いている。
そして確かに、その奥から猫の鳴き声が聞こえていた。
「あのぉ…
すみませーん…」
恐る恐る中に向かって声を掛けてみる。
外から回ってきたし、必死だったから頭から抜け落ちていたけど、この部屋って確か、相談棟の1番奥にあたるんじゃないかしら。
今さら頭を過ったのは、初めてこの学園に入学してから今までに、何度となく耳にしてきた、学園の噂話。
『相談棟の1番奥には、怪人が棲んでいる』
もちろん信じているわけでは無いが、なんとなく薄気味悪くて、気が進まない。
しばらく待って、もう戻ろうかと考え始めた時、
キィ…
部屋の中で、扉が開く音と、
ギシ、ギシ…
床が軋む音が聞こえてきた。
そして、奥から姿を現したのはーーーーー
「はい、なんでしょうか」
美しき、怪人だった。
最初のコメントを投稿しよう!