終章

2/4
/142ページ
「わあ、先生、来てくださったんですね! 葉介さんも、ありがとうございます」 「やあ、爽ちゃん。 おめでとう。 すごく綺麗だよ」 「ふふ、お上手なんだから」 純白に身を包んだ彼女は本当に綺麗で眩しくて、目を逸らしたくなる。 卒業式を終えて、季節はすっかり春。 満開の桜に彩られた鷹城家の庭はガーデンパーティの会場となり、たくさんの客で賑わっていた。 「爽ちゃん卒業しちゃったからさぁ、さみしいなあ。 人妻だと、外でおいそれと誘ったりできないし」 「ふふ、そんなことないですって。 あ、そうだ。 今度お店に、蔵の所蔵品いくつか持って行くから見てくださいよ」 「え?本当? 楽しみだなあ」 2人の明るいやりとりを眺めていると、奥のグループと談笑していた男が彼女の名前を呼んでいた。 彼女が手を振ってそれに応える。 「すみません、何か呼ばれてるので一旦失礼しますね。 ゆっくりして行って下さい、葉介さん。 先生も」 彼女の瞳が真っ直ぐこっちを見たので、頷いてみせた。 「ええ、ありがとうございます。 爽さん、お幸せに」 「淋しいよな、本当に」 葉介さんがポツリと言った。 「仕方が無いですよ」 そう言って歩き出す。 「え?もう帰るの?」 「ええ、もとより、お祝いを言いに行くだけのつもりでしたから」 背後からの「お祝いなんて、満足に言えなかったクセに…」というセリフは聞かなかったことにした。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!