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目の前の鉄骨は、私を地獄へと導くように延びていた。
鉄骨の先には、人影が見える。
「渡れってこと…?」
鉄骨の下は暗闇になっており何も見えない。
目に見えないものほど怖いものはない。
「扉は閉まってるわね…」
後ろの扉は鍵が掛かっている。
もう戻れないということだろう。
再び鉄骨の先に目を移した時、ノイズ混じりの声が聞こえてきた。
「ようこそ、サクリファイスへ。私はこの実験を担当している者だ」
この声には聞き覚えがある。
前回のサクリファイスで私達を散々苦しめた声だ。
性別は男、よく聞くような声のため特定はできないだろう。
「今、君達の目の前には鉄骨が延びているはずだ。
君達にはその鉄骨を渡ってもらう。
ただし、渡りきれるのは各鉄骨につき1人だ。
どちらかはここで相手の犠牲になる必要がある」
「そんな…」
今回も相手を犠牲にする殺人ゲームをしなければいけないようだ。
しかも、直接的な殺し合いを。
「君達の左側を見てほしい、そこにある箱を開けるとマスターキーが入ってる。
ただし、自分の仲間の部屋を開けるためのマスターキーは相手側の箱に入れられている。
次に右側を見てほしい。
そこには鉄パイプが入っている。
素手で落とし合うのは両方落ちてしまう危険性がある。
それを防ぐために用意した。
殴るなり、突くなりに使うといい。
制限時間は一時間。
それではスタートだ」
ノイズ混じりの声が聞こえなくなると同時に右の箱が開いた。
そこにはたしかに大量の鉄パイプが入っていた。
私はその中から二本を取り出し、鉄骨を見た。
あの声は
「どちらかが相手の犠牲になる必要がある」
と言っていた。
つまり、下に落ちるということは死ぬということだろう。
「それでも…私はやらなきゃ…」
私は皆を助けるために、そのために殺らなければいけないんだ。
自分にそう言い聞かせるように鉄骨に足を乗せた。
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