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今いる部屋は客間で、ここはうちから40分くらいの家。そして、靴がない。助けてくれた人は、お茶を淹れにいっている。
「あたし、あの人の名前、きいてない……」
奏子はベッドに仰向けに寝ながら、ぼんやりとしていた。
あのあと、申し訳なさそうにしている彼に「意味がわからない」と絶叫してしまった。
「すいません、姉のはあるんですけど、勝手に触ると怒るんで、しばらくここで待ってくれません?」
「困ります。」
「お願いしますっ」
これを繰り返して、今に至るということだ。
「靴を落とすとか、どんな速さで運んだのよ」
靴といっても、ストラップサンダルだから、そう易々と外れるはずはないのである。その上で両足とも靴を落とすなどあ急ぎすぎである。
「お待たせ。ミルクティーでよかったかな」
「ありがとうございます……」
「ごめん。」
無言。迷惑をかけた上に怒鳴ってしまった気まずさから、空気が重たい。名前も聞けない。
「ちょっと~、ケーキ買ってきたわよ紅茶いれなさい」
少し遠いところから、女性の大声が聞こえた。
「あ、帰ったみたい。ちょっと待って」
「あら、なんでここにいるの?」
「あ、姉さん」
ドアノブがひねられ、扉がすごい勢いで開かれる。
「女の子?ベッド?」
「あ、ちがくて、」
「……」
また、不幸が回ってきた気がした。
「ありえない。女の子を家に連れ込むなんてっ。謝れっ」
お姉さんは大股でベッド横に座っていた彼の傍まで来ると、その手に持った大きなバックで弟の頭を横殴りに殴った。
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