さんざんな序章

5/6
前へ
/17ページ
次へ
放課後、奏子は食料品を買おうと近所のスーパーに向かった。このスーパー、「近所」といっても歩いて15分はかかる。 「都会も不便なところあるんだなぁ」というのは初めの頃の感想。田舎ではスーパーは広く、けっこう身近にあった。 3カ月たった今ではすでに諦めている。 「暑い~」 入学から3カ月ということは現在、6月。にも関わらず、真夏日の日すらある。奏子にとって暑いのは大きな問題だ。汗はでる。しかし大学には化粧をしていかなければならない。汗じみやにおいにも注意が必要だ。女の子は大変手がかかるのである。 チャイムと共にスーパーに入る。 「今日は魚に野菜に卵かな」 マンションでは自炊生活を送っているため、バランスも考えなければならない。 「あ、あじがある」 魚が唯一取り柄の田舎から出てきただけあって、奏子は魚には詳しい。 「久しぶりにひらまさとか、あずき貝とか食べたい……」 順に見て回ってから、奏子は暑さの地獄に再び出た。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加