2人が本棚に入れています
本棚に追加
「座って。そのままじゃ危ないし、落ち着いて話を聞いてもらえるかな?」
彼は落ち着いた声とともに両肩をつかんで倒れかかってきた奏子をその身から引き離すと、ゆっくりと手を添えて奏子を後ろのベッドに座らせた。
あ、この人は助けてくれた人。急激に入ってきた情報にうろたえて咄嗟にあわててしまったと気づいた奏子はされるがままに座る。
「あの、ごめんなさい。びっくりして、それで……」
「大丈夫。何もしてないし、何もしないから。」
そう言いながら彼は奏子に背を向けると、近くにあった椅子をベッドの方に向け、座った。
「まず、君が触っていた猫は俺の家のやつで、探してたんだ。」
「あ、あの、ごめんなさい。勝手に触って……」
最初に声をかけらた時のことを思い出すと、怒っているのかもしれないと思った奏子は素直に謝るべきだと考えて謝った。
もしかしたら、自分の猫には触られたくない人かもしれないから。
「いや、怒ってない。」
「でも、声……」
「声?ん、あぁ、あれは走ったからだよ。」
ということは怒ってはいないみたいだ。
「で、走っていったらあんたがしゃがんで撫でてたから、捨て猫だと勘違いしてたら困ると思って返してくれって言ったんだ。」
もしかしたら、拾われて連れて帰ろうとしているようにみえたのだろうか。
「で、いきなりあんたが倒れてきたから、びっくりしたけど、熱中症対処ならできると思ったし、ここの方が近かったから背負ってきたんだ。」
確かにあそこから病院は車でも30分以上はかかる。
「すみません、いろいろと迷惑をかけたみたいで。」
「いや、それはいいんだけど……」
なんだろう。
「あのさ、ひとつだけ謝らなきゃならないことがあって……」
「君の靴、どっかで落としてきたみたい。」
最初のコメントを投稿しよう!