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「お待たせしました!」
「ん?あぁ、気にすんな!」
中三の夏、高校見学の為に俺、不平等院旋法(ふびょうどういんせんぽう)と幼馴染みの有頂天身八 (うちょうてんしんや)は待ち合わせをしていた。
「熱いねー」
身八はそういうと服をパタパタとし始めた。
「あの…ちょっと…やめてくれないかな?」
別に涼むなと言うわけではない。
ただ、女子がやると胸元が見えてしまうのだ。
俺はそういうのが本当に苦手なのだ。
「なんでー?」
身八はわかっているのか天然なのかよくわからない声を出した。
「だから…胸元が…見えt」
抱きっ!! いきなり抱きついてきた。 頭が色々な意味でクラクラする。
「ちょ、マジで離れて!」
必死に振りほどこうとするが離れない。
どんどん体温が上昇する。
「だってさー、旋って冷え症でしょー?だからひ んやりしてきもちーなーって!」
この天然がぁぁぁあ!
冷え症だからって暑いもんは暑いんだ!
そしてまわりからの視線が…
確かに端から見たらただのいちゃついてるカップルだもんな…
「ほら、いくぞ!」
しがみついてる身八を引きずって高校に向かう。
なんか、コアラにしがみつかられたユーカリの木の気分だ。
「自分で歩くから引きずらないで~」 そういってぼくの腕にしがみついた瞬間
ピタッ… 時が止まった。
進む車も話す人も風に流される雲もすべて止まった。
「なん…だよ、これ…」
しかし、自分もまわりの人間と同じように動けない。
そして、気づいたら時は動きはじめていた。
「どうしたの?顔色悪いよ?」
「あ…いや、なんでもない…」
その時見た光景は文字通り脳裏に焼き付いた。 そしてこの出来事が大きく人生を狂わすことになるのだがこの時、高校でいちゃついてるカップルと勘違いされ誤解を解くのに必死だった俺は特に 気にもしなかった…
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