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俺は今日、死ぬ。
この、どこにでもありそうな一振りの刃物によって。
理由は二つある。
ひとつは身八の失踪。
身八は過去に一度、失踪している。
高校一年の夏、俺に電話で
「私…今から飛び降りるから」
と一言言って失踪した。
その時は一週間程度経った後にひょっこり帰ってきた。
しかし、身八は口を開こうとはしなかった。マスコミも一時期取り上げ、警察もわんさか来たがそんな彼女に次第に興味をなくし結局、家出と言うことで片付けられた。
今回もそうかもしれない。
そう思ったときは何度かあった。
けれど今回は突然消えた。
蒸発、と言う表現の方があっているかもしれない。
そしてもうひとつは親の死。
身八が失踪した日の夜、つまり俺が家の二階で泣き叫んでいたとき、一階で断
末魔と感触の悪い音がした。
涙を拭き、下を見に行ったとき目の前に広がっていたものは
血溜まりと
グチャグチャになった肉片と
粉々になった骨と
真っ赤に染めた服だった。
思わず口を押さえた。
しかし、押さえきれる筈がなかった。
ボドボドボド…
胃の中のものが嘔吐物となって吐き出される。
嘔吐物の異臭と血の臭い、そして汗の臭いが鼻ではなく脳に突き刺さる。
「なんなんだよ…何があったんだよ…」
頭のなかは混乱していたが気付いたら警察を呼んでいた。
警察官といえどその異様な光景を目にすると目をそらしたり嘔吐するものもいた。
当たり前だ。こんなのあり得ない。
そんななか、一人の警察官がその異様な光景を凝視していた。
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