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『ずっと好きでした!僕と付き合ってください』
薄暗い夜の神社に少年の声が響いた。あたりを照らすのは月明かりと、ときおり打ち上がる近くの夏祭りの花火の光だけだった。
少年の名前は北野健介といい、顔は平均よりも少しかっこいいかなぐらいで、髪はくしゃくしゃだった。
少女の名前は新庄莉奈といい、顔だちがよく、いわゆる美少女で、肩を少し超えたとこにある綺麗な黒髪を頭の後ろに下ろしていた。
莉奈は健介の言葉に一瞬驚いた表情になったが、すぐに困った顔になり、その後悲しいような、申し訳なさそうな顔で健介を見つめた。
その表情を見た時に健介はどんな返事がかえってくるのか、想像出来てしまった、おそらく自分がのぞんでいる返事はもらえないだろう、そんな事を思ってしまった。
「・・えっと・・・・その・・」
苦しそうな顔で莉奈が話そうとした、しかし、うまく言葉に出来ないようだった。
言葉に詰まる莉奈は見ていて辛かった、彼女にこんな表情をさせているのは自分が原因だという事は健介自身がよくわかっていた、だからもうはっきりさせよう、と覚悟をきめた。このままだとどっちも苦しいだけだ、もしかしたら自分の考えが間違っているかも、なんてちっぽけな希望を胸に・・・・
「・・・いいよ。正直に言って。その方が・・・すっきりするから。」
「うん・・・・わかった。・・ごめんなさい。私には好きな人がいます。だからあなたとは付き合えません。」
鋭い矢のようなものが健介の心に刺さった様な気がした、予想していたとはいえ辛いものだった。
「・・・・それが誰か・・聞いてもいい?」
健介は思わず聞いてしまっていた。自分の好きな人はいったいどんな奴が好みなのか、気になった。すると莉奈は顔を真っ赤にさせて、つぶやく様に言った。
「・・・・智也だよ。私の好きな人は・・」
彼は高崎智也といい、クラスでもかっこいいと評判だった。そして莉奈と幼なじみだ。というより健介と、莉奈と、智也の3人が幼なじみだ。
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