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ジル「アル、やつあたり……ダメだ」
アル「あぁ、うん。分かっているけど少しくらい良いじゃないか」
ジル「……」
ジルがじっっとアルに視線をやる。
アル「分かったよ」
根負けしたようにアルは視線を逸らした。
アル「試すようなことを言って悪かった。転移されてきた彼らからも話は聞いていたんだ。やむを得ない状況だったと我々も判断しているし、国の上層部でも保護という形を取ることで決定した。そもそも、ユイもレンも人型だから魔族とはバレていないだろうし」
ジル「でも、ケジメ。今回は特例」
レン「分かってるよ。この国に人間が入ることで一騒動あっただろうってことは。閉鎖された国であるだけに、小さな情報でも機密情報と同じくらいの価値を持つ。彼らは国外に出ることは出来なくなった」
アル「うーん。出ることはできるよ。監視付きだけど」
レン「けど、そんな大事なことを1人で決めてしまった」
咄嗟のことだったとは言え、それだけは悔やまれる。
アル「ま、彼らはそれでいいと言ってるんだから良いんじゃない?むしろ帰りたくないからここで働かせてくれと泣き付かれたのだけれど。他国の情報は常に仕入れているつもりだったが、そんなに酷いのかい?」
レン「……え?」
アル「うん?」
彼らは、勝手に未来を決めてしまった俺に怒ってないのか。
張っていた気が緩んで足に力が入らなくなった。
ジル「ちゃんと、考えて選んだ。分かってくれてる」
床に座り込んだ俺に、傍に来たジルが肩を貸してくれた。
アル「レン、本来ならキミが背負うべきでない選択をしなければならなかったね。だが、ここからは私達に託せば良い。それが私達の役割だ」
レン「あり……がと」
唇が乾いて上手く言葉が発せない。
ジル「レン……疲れてる。部屋、送る」
アル「あぁ、そうだね。また明日詳しいことは話をしよう。ゆっくり休んで」
そうして、俺はジルに引きずられるようにして執務室を後にした。
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