1164人が本棚に入れています
本棚に追加
ケイト「あ、レンさん。お加減はいかがですか?」
突き当たりの角を曲がったところで、空の大だらいを4つ抱えたケイトと会った。
レン「よく寝たからもう大丈夫だ。それ、貸せよ」
ケイト「いえ、あっ」
何か言おうとしたケイトからたらいを取り上げて歩き出す。
ケイト「すみません。何度かに分ければ良かったのですが、無精してしまって」
恐縮したケイトが申し訳なさそうに言う。
レン「いや、お前が全部持ってるのを母さんに見られたら何て怒られるか分かんねーし」
数ヶ月栄養が足りない状態であったケイトは、10歳だというのに小さいし細っこい。
そんな子どもに重労働させられない。
レン「ここには慣れたか?」
並んで歩きながら何か話題をと考えて、結局当たり障りのない質問をしてみた。
ケイト「あ、はい。いいところですね。空気や水も綺麗だし、みなさん優しいですし」
レン「そっか」
たぶん、ケイトはまだ人型の魔族にしか会ってないんだろうな。
獣型とか竜型、爬虫類型の中には見た目がグロテスクな者も多くいる。
離宮はほぼ人型、いても竜人型か獣人型しかいない。
だからそんなことが言えるんだろう。
魔族のくくりに入る者達は、普段は柔和な性格であっても一度怒らせたら獰猛だ。
村長にしろケイトにしろ、ここにいることを決めるには判断材料が足りていないことに気付いていない。
やはり決断を早まったか。
ケイト「どうしました?着きましたよ?」
レン「あぁ、悪い」
考え事をしていたら中庭に着いてしまっていたらしい。
カイト「兄さん、もう大丈夫なの?」
母さんと物干しを立てながらカイトが聞いてきた。
レン「あぁ、大丈夫だ。心配かけたな」
カイト「良かった」
ほっとした顔をするカイト。
よほど心配させたようだ。
レイカ「さぁ、始めましょうか」
母さんがバケツの水をたらいに移し替え、洗剤を入れる。
ケイトとカイトがよく洗った足でたらいの中に入れたシーツを踏む。
俺と母さんでがすすいで絞り、干す。
浄化石でも綺麗にはなるが、洗濯した方が気持ち良いいというのが母さんのこだわりだ。
全ての洗濯が終わる頃には、時計の針は9時を指していた。
.
最初のコメントを投稿しよう!