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レンに案内されてリビングに入ってきた老人に急遽創造で作ったイスを勧め、コーヒーを出した。
俺らも卓につき、食事を再開する。
……客人をもてなす雰囲気ではないかもしれないが、当の本人が良いって言ったから遠慮なく。
?「改めまして、お初にお目にかかります。ユイ様、レン殿」
コーヒーを一口飲んで、老人が言った。
長いヒゲをたくわえた彼は、見た感じすごく某魔法学校の校長に似ている。
ユイ「おじいちゃん、ぼくたちのことしってるんだねー?でも、ぼくはおじいちゃんのことしらないよー?」
久しぶりのお子さま仕様。
俺の転生話は極秘だかんな。
?「わたくしはマルクス・フォードと申します。前王の御代から王国に密偵として潜入しております。アルベール様、ジルベール様の代になられてからもお二人にはよくしていただいております」
マジか。
そりゃお疲れさんだな。
レン「ご高齢の身で密偵とは、お体に障りませんか?」
軽く60歳は行ってる見た目だし。
マルクス「あぁ、いえ、この姿は潜入用でして。本来の姿は」
そう言ったマルクスの姿が見る見る内に変わっていく。
マルクス「このようなナリをしております。といっても、この姿に戻るのは4年振りぐらいでしょうか」
切れ長の蒼い瞳と蒼い髪。
年は20代後半から30代前半といったところか。
身長は180くらいで程良く鍛えられて締まった体つき。
ちっ、うらやましい。
レン「変体の魔法……ですか?」
レンは興味津々といった様子で質問してる。
マルクス「いえ、わたくしは幼い頃から一度会った方に完璧になりすますことが出来るという能力を持っておりまして」
聞けば、なりすます相手の姿から声から性格から、果ては過去の記憶まで完璧に再現できる能力だという。
過去の記憶までって、それってもうどっちが本当の姿か分かんなくなんねぇ?
俺の表情を読み取ったのか、マルクスは苦笑する。
マルクス「自分でも恐ろしい能力だとは感じておりますが、それを先代はすごいと褒めてくださった のです。幼い精神で大人に変身してしまい、彼が負ってきた過去の重みに耐えられずさまよっていたわたくしを」
お……おぅ。
ヘビィだな。
ユイ「たいへんだったんだねぇ。ぼく、おとうさまにあったことないけど、いいひとだったんだねぇー」
お子さまだと言えることも限ってくるよなー。
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