幸せな毎日は…

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もう二度とは帰って来ないあの日々を、僕はただ無感情に思い出す。 雪が居なくなった後に訪れたクリスマスは、やはり奇跡を起こしてはくれなかった。 ならいっそのこと、彼女を忘れてしまえば楽になるのだろうか…? 全てをなかったことにすれば、きっと楽になれる気がする。 ただただ、抜け殻のように過ごす日々。 街は霞んで見えて、灰色の空を一層暗くさせた。 何がいけなかったんだろう? そんなことを考えてもただむなしいだけで、彼女を取り戻す方法も見つけられない。 無情に過ぎ行く時間が、何事もなかったかのように過ぎる時間が、僕の中で彼女を幻にさせる。 君の居ない世界は、こんなに濁っていて、こんなにも息苦しかっただろうか? 彼女と一緒に夕飯の食材を買いに行ったスーパーや並木道を、ただ呆然と眺める。 楽しかった日々が酷く遠く感じて、自分の部屋がやけに広く感じた。 願うのも祈るのももう疲れたから…。 君を失った心は、氷のように冷えてしまったから。 きっと二度と人を愛せない。 だから…もういい。 さようなら、愛しい君。 さよなら、大好きだった雪。 ―*―*― 時は過ぎ、僕はあの日から二度目のクリスマスイブを迎えた。 相変わらず仕事に追われる日々と、変わらない毎日を過ごしていた。 いまだに、ふとしたことで彼女のことを思い出すが、苦しかった胸の痛みは、時が少しずつ癒してくれた。 それでもやっぱり、まだ誰かを愛すことは出来ずにいるけれど、君は幸せになっていてくれてるのだろうか? こんなに時間が経って、ようやく心から君の幸せを祈れるようになったんだ。 一時期は恨んだりしたけれど、霞んで見えた街も、今なら少しだけ色づいて見えるから。 「はぁ…」 吐き出した息が空へと上っていくのを見上げ、僕は弱々しく微笑んだ。 この空の下のどこかに、君は居るのだろう。 笑っていてくれていることを願う。 いつかチラリとでも良い、君の笑っている姿を、遠くからでも見られたらいい……。  
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