幸せな毎日は…

4/4
前へ
/10ページ
次へ
「どこかに居たりしてな、シロ…」 ふっ、と笑う。 もしかしたら雪を見つけて、シロだけでも幸せになっていたら良いと思った。 今なら心からそう思える。 あの幸せな日々は、神様からのちょっとした贈り物で これからは自分で探せという、そういうことなのかもしれない。 「雪…」 綺麗な白い雪。 可愛くて暖かかった雪。 もうしばらく君を想うことを、どうか許して。 だって、初めて心から愛したのだから、これくらいは多めにみてよ。 そう考えながら雪を積もらせていく街中のクリスマスツリーを見つめる。 いまだに君を思えば胸がチクリと痛むけど、きっと乗り越えるから。 だから、そのときは……― 不意に、背後から傘が差し出された。 肌に触れなくなった雪の冷たさは消え、代わりに暖かすぎる声が降ってきた。 「風邪、引いちゃうよ…?」 ドクン、と、大きく心臓が波を打つ。 「ンナァ~」 忘れもしない、あの猫の不細工な鳴き声が足元から聞こえた。 いきなり襲いかかる胸の締め付けに、情けなくも声がかすれた。 「雪……?」 と、振り向いたそこには、あの日から、今でも心の奥にいるあの姿と少しも変わらずに、ずっと会いたかった彼女が居た。 「うん、陽介」 暖かい微笑みに、少しだけ涙を浮かべて、あの日の君が居た。 「ンナァー」 足元でシロがもう一鳴きした。 自分は夢を見ているのだろうか? だって、目の前に、あんなに会いたかった雪が居る。 探しても探しても見つからなかった##name1##が、今ここに居る…。  
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加