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「どこかに居たりしてな、シロ…」
ふっ、と笑う。
もしかしたら雪を見つけて、シロだけでも幸せになっていたら良いと思った。
今なら心からそう思える。
あの幸せな日々は、神様からのちょっとした贈り物で
これからは自分で探せという、そういうことなのかもしれない。
「雪…」
綺麗な白い雪。
可愛くて暖かかった雪。
もうしばらく君を想うことを、どうか許して。
だって、初めて心から愛したのだから、これくらいは多めにみてよ。
そう考えながら雪を積もらせていく街中のクリスマスツリーを見つめる。
いまだに君を思えば胸がチクリと痛むけど、きっと乗り越えるから。
だから、そのときは……―
不意に、背後から傘が差し出された。
肌に触れなくなった雪の冷たさは消え、代わりに暖かすぎる声が降ってきた。
「風邪、引いちゃうよ…?」
ドクン、と、大きく心臓が波を打つ。
「ンナァ~」
忘れもしない、あの猫の不細工な鳴き声が足元から聞こえた。
いきなり襲いかかる胸の締め付けに、情けなくも声がかすれた。
「雪……?」
と、振り向いたそこには、あの日から、今でも心の奥にいるあの姿と少しも変わらずに、ずっと会いたかった彼女が居た。
「うん、陽介」
暖かい微笑みに、少しだけ涙を浮かべて、あの日の君が居た。
「ンナァー」
足元でシロがもう一鳴きした。
自分は夢を見ているのだろうか?
だって、目の前に、あんなに会いたかった雪が居る。
探しても探しても見つからなかった##name1##が、今ここに居る…。
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