プロローグ

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 今から約80年前、世界を炎と毒で包んだ魔法大戦が終結した。多くの命を、笑顔を、日常を奪い、十数年にも及ぶその戦を終わらせたのは、皮肉にも、その戦争が生み出した“新種”と呼ばれる存在の出現だった。 魔力の暴走により生まれたソレは、ありとあらゆる生物を攻撃対象とし、各国とも“新種”対策に追われ、戦争などしている場合ではなくなったのだ。  戦争終結後、各国に《魔法庁》が作られ、魔力暴走による第二、第三の“新種”の誕生を防ぐために、魔法に対する制限が始まった。その一方、“新種”対策として優秀な武力を求めていった。  南の大国ヴァンテールでも、他国同様、国内外問わず優秀な人材を集め《軍》を作り上げた。  そんな《軍》の中でも、最強を誇る特殊部隊アルクス候補生を育てるべく作られたのが、ヴァンテール王立アカデミーである。  「本っ当にエステルが合格するなんてな。」  星祭りの準備で賑わう公園で友人とベンチに座りながら、少年はそう呟いた。彼の横では二人の少女が同じように座りながら1枚の紙を真剣に見ていた。  かの有名なヴァンテール王立アカデミーの印の押された封書。そこに書かれた『エステル=エアハート』という名前と『合格』の二文字。 「そりゃ、たくさん勉強したからね。」  合格通知を折り畳みながら。エステルは不敵に微笑む。  憧れの王立アカデミー。知力だけでは合格できない。体力はもちろん、魔法の素質がなければ、入学試験ですら受けることができない。
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