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「そうよね。エステルってば試験対策ばかりで私の相手なんて全然してくれなかったものね。」
「うっ,,,,,,セリシア、それはーー」
幼馴染みの鋭いツッコミに思わずエステルはたじろぐ。思い当たりが多すぎて、胸が痛い。
そんな彼女の仕草に、セリシアはいたずらっぽく微笑んだ。
「冗談よ。だって小さい頃からの夢だったんでしょ?」
ずっと一緒にいたから知っていた。彼女がずっと、本当にずっとそこを目指していたこと。一人こっそり長年にわたり努力していたこと。剣術の稽古でたくさん怪我をしていたこと。それだというのに、何もなかったかのようにいつも遊んでいたこと。
「それにリオンも。武術学校への入学、決まったんでしょう?」
セリシアはもう一人の幼馴染みに視線を向ける。エステルの合格話の後で少々霞んでしまったが、彼だって目標としていた場所へと行けるのだ。
「まぁ、街の武術学校なんてアカデミーに比べたらな。」
リオンは頭をかきながらそう言うが、顔はにやけていた。まんざらでもないようだ。
「本当、すごいよ。二人とも目標に突き進んでさ。」
まるで自分のことのように嬉しそうに二人のことを称えていた彼女だったが、だんだんとその表情は曇っていった。
「でも、これでみんなバラバラだね。今までずっと一緒だったのにね。」
その言葉に、エステルもリオンもその表情が強張った。
もちろん、そんなことなんて前から分かっていたし、覚悟もしていた。今さらであるが、それでも本当に離ればなれになることが決まってしまった。現実となってその意味を身近なものとして考えることができた。
もう、こうやってすぐに会うことなんてできない。
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