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もう一月もすれば、それぞれの場所で新たな生活が始まる。
エステルは王立アカデミーのある王都セントリーフで。王立アカデミーは全寮制で、長期休暇くらいしかこちらに帰ってくることができない。
それに、会いに行くにも王都までは一番速い交通手段の高速鉄道を使っても半日以上はかかる。鉄道は大変高額なので、手頃な値段で尚且つ一般的な交通手段である辻馬車を使ったとしても、片道二日。決してすぐに会いに行ける距離ではない。
一方、リオンの武術学校はこのファンメールの街にあるのだが、学業に訓練、警備など、これまでの生活とは違い、きっちりと管理された生活になる。今までのように、気楽に頻繁に会うこともなくなるだろう。
「セリシア。」
落ち込む幼馴染みの姿に、思わず二人は黙り込んでしまう。
街中をキラキラと彩る星まつりの灯り。いたるところに用意された沢山の屋台と星のモチーフのランタン。これを三人揃って見てまわるのも、今年が最後となってしまうのかもしれない。
エステルが王都に出発するまであと一月。
「長期休暇には必ず帰ってくるから。それに、あと一月あるんだし、一緒にいっぱいいろんなとこに行こ。」
落ち込むセリシアの身体をギュッと抱き締めながら、エステルは言う。明日にでもいなくなるわけではない。
「お、俺だって、時間があるときにはお前んちのパン屋に行くからさ!」
リオンもどさくさに紛れて抱きつこうとするが、それはエステルの拳によって阻止された。思わずセリシアから笑い声が上がる。
公園には子どもたちの楽しそうな笑い声が響く。まつりの準備も、いつの間にか終わったようで、大人たちの姿は消えていた。
3人も、いつだって一緒に泣いて笑って、沢山の思い出を作り上げてきた。
いつまでも一緒だと思っていた。
「大丈夫。離れていたって、私たちはずっと友達だよ。」
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