1.災難のハジマリ

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 鏡に写る自分の制服姿に、思わずにんまりと笑う。男女とも同じデザインでパンツスタイルのため、ファンメールの中等学校時代の制服のような可愛らしさはないが、それでも憧れの制服だ。  長い髪を高い位置で一括りにすると、鮮やかな緑のリボンを結ぶ。自分の瞳と同じ色のリボンは、栗色の髪によく合っていた。少し幼い気もするが、折角セリシアとリオンからもらったものだ。 「エステル~準備できたぁ?」  反対側の壁から、同室のファンの呼ぶ声がする。彼女とは二日前、この寮に入ったときに初めて会ったのだが、話も合い、すぐに打ち解けることができた。 「うん。じゃあ、せーので振り向くよ。」  二人でせーのと掛け声をかけると、くるりと振り向く。視線の先には、自分と同じ制服を着た友人の姿があった。違いと言えば、ネクタイの色。エステルは赤いタイをしているが、ファンのそれは緑色だ。 「ようやくアカデミー生って感じだね。」 「まぁ、今日はまだオリエンテーションだけどね。」  今日から3日かけて行われる新入生オリエンテーションが終わると、全学年通常講義が始まる(ちなみに入学式はない)。その為、2年生以上は講義開始日に間に合うように寮に戻ってくればいいので、現在寮内にいる学生のほとんどが新入生だ。
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