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「それに、せっかく制服姿なのにね。」
そういうと、エステルは自分の左頬を撫でる。そこにはでかでかと絆創膏が貼られていた。昨日の怪我とはいえ、痛みはそこまでない。というか、切り傷ではないのだが、その絆創膏の下はとてつもない状態になっているので、剥がすわけにもいかない。
「本ッッッッ当に災難だったよね!!」
あの出来事を思い出したのか、ファンが怒りの声をあげる。彼女自身は直接被害を受けたわけではないのだが、相当腹がたったようだ。
「しかも勝手に変な話になってるしさ。」
その言葉に、エステルは、眉を寄せる。実は事件後、傷の様子と体調を診るため、医務室で休んでいて、先程部屋に戻ったばかりだった。食事も医務室でとっていたので、食堂には足を運んでいない。
「どんな話?」
嫌な予感しかしないが、参考までに一応聞いておくことにした。
「なんかいろんな話が混ざっちゃって『上級生からしつこく絡まれている女の子を助けようとしたら、剣で斬りかかってきたから、掃除に使っていた箒で応戦して、相手の剣を折って、ボコボコにして土下座で謝らせた新入生がいる』って話になってるよ。」
もう、全く別の話になっていた。思わずエステルは頭を抱える。噂なんて所詮、伝わる途中で色々付け加わるものだと分かっていたが、ここまで変わってしまうとは。
まあ、伝わって欲しくないところが消えているのは嬉しいことだったが。
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