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気にはなったが、学校に行かなければならないということを思い出した。
そのときだった。うっすらとだが、自分と同じくらいの年代であろう女の子が見えた気がした。
しかし、見間違いかと思いそのまま振り向いた瞬間だった。
「!!?」
振り向いたただそれだけの一瞬のうちに、薄暗い建物らしきものの中にいた。
木製のようで、蝋燭のような橙色の淡い光が辺りを照らしているようだが光源がどこにも見当たらない。
かと言って、壁や床が自ら発光しているふうでもなく、あくまで光を受けたようにぼんやりとその姿を晒している。
「…どこだ?ここ。」
道は前後にちょうど人間一人分の幅で広がるのみ。
さっきまで先を歩いていた弟の姿もどこにも見当たらない。少し不安に駆られたが、その場に留まる理由も度胸もなかったので取り敢えず前に向かって歩いた。
暫く歩くが景色も変わらず、危機感を覚えてきた時だった。
少し後ろの方から微かにだが何かを引き摺るような音がしていることに気づいた。
…ザー……ザ…ザー………
途切れ途切れに聞こえてくる。
足を止めて振り向くが、そこには何の姿もない。音はまだ聞こえている。
じっと息を殺して音のする方を見つめる。
音は確実に近づいてきているが、やはり姿は見えない。それでもなお動かずにいるとピタと目の前で音が止まった。
「……。」
トントン
「ひゃぁっ!?」
後ろからいきなり肩をたたかれて、驚いた雛基は声にならない声をあげてその場をから逃げ出そうとした…が、なにかに腕を掴まれる。
「いやっ…!!」
必死に腕を振り払おうとするが、腕を掴む力は一向に弱まらず、焦ってパニックになる。
「離しっ…!」
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