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「ちょっとっ!待ってってばっ!!」
ハッと気づいて腕を掴んでいる何かの方を見るとそこにいたのは弟だった。
「な、なんだ…俊樹か…。」
ここに来てそんなに経っていないとは思うが、今まで一人だったことがあってか弟の存在が本当にありがたい。
互いにあまり干渉しない性格で、そこまで仲は良くなかったのだが家族という血の繋がりが安心感をより一層強めさせた。
「ちょっ…苦しいっ!」
「あ…あぁ、ごめん」
気がつくと嬉しさのあまりか弟を抱き締めていた。苦笑いするしかない。
苦しがられたので弟を離してから気付いたことだが、どうやら手が震えているらしい。
「お、おぉ…。」
気分的にはもう大丈夫なのに手が震えていることに驚いた。体の方はまだ先程の恐怖感を覚えているようだ。
心と体のギャップに思わず笑ってしまった。
「急に笑ってどうした?」
やはり今の状況に笑いはおかしかったのか、弟に訝しげな視線を向けられた。
「ハハ…いや、手が震えてるのがおかしくて。」
未だに小さく震える手を見せながら弟に答えると、その手をパッと掴んでまた問われた。
「あのさ、無理に笑わなくていいんだよ?」
「えっと、無理に笑ってるわけじゃないんだが…。」
これは本心だが、弟が目の前で納得いかないというような顔でこちらを見ている。しかしもうそれだけでさっきまで感じていた恐怖がなくなったと感じる。
「…まぁいいや。ここに来る前、女の子見たでしょ?」
「女の子?」
いいのかい!と内心ツッコミながら疑問を返す。
女の子を見たからといって何になるんだろうか。今の状況と全く関係がない気がするが…。
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