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「ハァッ、ハァッ…」
暫く走って振り向くとそこに塊はない。思わず床に座り込み、頭を抱える。
この状況にまた混乱してきていた。
たぬきが女の子で、弟は溶けて、ここは…ここはどうやって出れば…
弟からは何も聞いていないが、出口があるのは確かだ。気を奮い立たせて立ち上がり、今度は慎重に、出口がないのかあたりを隈なく探りながら一歩一歩前へと進む。
目を凝らして見ても、それらしきものは見当たらない。
と、後ろからコツコツと人間らしきものの足音が聞こえる。
人間だったらありがたいが、今度さっきの塊のようになられたらそれこそ失神してしまいそうだ。
コツコツ…
足音は徐々に近づいてくる。
雛基は壁に張り付いて音のする方をジッと見た。
コツコツ、コツコツ…
「え…」
足音と共に現れたのは執事のような服を着た人だった。雛基から1メートル近く離れたところで足を止めたその人は、細身で身長も高くスラリとしていてできると感じさせる。
そんな人なのだが、頭部がない…
「ひア…」
無理やり千切ったかのような不揃いな首の切り口…ドクドクと溢れる腐ったような赤黒い血を見た瞬間、雛基は気を失った。
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