虚言

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盗み聞きをするつもりはなかったが、会話の内容が聞こえた。 「ええ。うちには来ていませんが?どうせどこかを遊び歩いてるんじゃありませんか?それでは失礼します。」 電話が終わったようだ。 一階に下り、母さんに声をかけた。 「電話?なに話してたの?」 「……何でもありません。それより、お勉強は?」 「一段落したから少し休憩。それに喉も渇いたから母さんに紅茶を淹れてもらおうと思って」 「ごめんなさい。母さん気が利かなかったわね。」 母さんはそう言って、いそいそとキッチンに向かった。 電話なんだったんだろう? 何でもないってことは大したことじゃないのだろう。 そう自分を納得させ、俺は部屋に戻った。 机に座り、退屈なテキストに目を落とす。 ため息が出る……。 俺は将来父さんの会社を継ぐことが決まっている。 ただ、その為には今から教養や知性を身に付けなきゃいけないんだそうだ。
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