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血の気がサッと引いていく。
汐莉の母親が叫ぶ。
「何でもいいの!あの子達が何処にいるか心当たりは無い!?何か言ってなかった!?」
それを皮切りに、みんながそれぞれ息子や娘が帰らない苦しみや悲しみを俺にぶつける。
俺は何も言えず、ただ立ち尽くしていた。
先生が親達を落ち着かせるのに必死になっている。
俺の頭の中は真っ白になっていた。
警察の人はまっすぐに俺の目を見て、落ち着いた口調で俺に聞く。
「何か、知らないかね?」
「……知りません。あの日はみんなと駅前でハンバーガーを食べて、僕だけ先に帰りました。塾があったから……。みんなからは何も聞いてません」
咄嗟に俺の口から出たのは『嘘』だった。
誰かの母親の声がした。
「ほんとに、知らないのね……?」
「はい……お役に立てなくてすいません……」
その問いに答えた自分の声が震えているのが分かる。
その後、先生から「もう行っていいぞ」と応接室から出るよう促された。
俺は一言、「失礼します」とだけ言い、頭を下げ部屋から出た。
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