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部屋に差し込まれたソイツの手は、明らかに人間のそれとは違った。
肌の色は深い緑色をしている。
爪は伸び、鋭く尖っている。
ソイツは手だけを部屋に差し込んだ後、一向に部屋に入ろうとしない。
まるで隙間から様子を伺っているようだ。
教授とタムジュンも、ソイツの手の異常さに気付いているのだろう。
強張った表情で、ドアの方を見つめている。
自分の手が小刻みに震えているのが分かる。
心臓は、口から飛び出しそうなくらいバクバクと物凄いスピードで鼓動している。
時間にしたら、たった20秒やそこらだろう。
でも、途方も無く長く感じた。
その瞬間はきた。
バンッと勢い良く開け放たれるドア。
部屋に飛び込んできたソイツを見て言葉を失った。
背丈は人間と同じくらい。
手と同じく、皮膚は深い緑色をしている。
頭には白い毛がまだらにに生え、顔はどす黒い目がギョロっと付いていて、口からは鋭い牙がガタガタに飛び出し、涎がだらしなく垂れている。
そう、まるで鬼のような表情だった。
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