1人が本棚に入れています
本棚に追加
「………。」
いつの間にか俺は草原に寝転んでいた。
気付けば草の感触、風の音、日差しの熱が。
つまり、感覚があった。
「あれ…?何でそんなこと知ってんだ…?」
そんなこと、だ。
俺は知らないはずだ。赤子より無知で、存在も認知も何もされてないはずの俺が、何かを知っているのはおかしい。
「………ま、いっか。」
俺は立ち上がろうとして、止めた。
「住む場所も金もねぇ。服は何故か着てるが…生きてはいけねぇ。」
俺には名前も無い。
自分の事はほとんど分からねぇ。
分かるのは俺が今ここに存在すること。
ここが草原だということ。
常識はあるということ。
ぐらいか?
「………あー、どうしよ。」
物語の主人公なら此処で出会いがあるだろう。
出会った誰かが助けてくれるだろう。
だが、俺は主人公でも敵でも脇役でも村人Aでもモブでもない。
誰も助けてくれねぇ。
「………取り敢えず、歩こう。」
俺は改めて立ち上がり、歩きはじめた。
最初のコメントを投稿しよう!