白い冊子と男

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あっこからのメールから幾日たったある日、先月から続いていた長期残業が、区切りをうった。 毎日十時に帰宅してシャワーを浴びての繰り返し、やっと定時に終わり、コンビニスイーツを買って帰った。 「ただいま」 玄関には、珍しく父の靴があった。 父はサラリーマンだけど、いつも帰りはわたしより遅い。 毎日いろんな書類を持ち帰っては、夕食を食べたら書斎へよくこもる。 そんな父が定時の私より早いのは違和感を感じた。 有給など、あまり消化をしないせいか、よく上司に小言を漏らされてまいると父はよく母に愚痴っていた。そんな父が平日に有給を消化したのか、はたまた体調でも悪いのか…。 その違和感を抱えリビングに入ると、家族がテーブルをかこっているのが見えた。 「あれ、どうしたのみんな揃って」 テーブルの一点で、美香はすこしぎこちない表情をして、おかえりなさいという。母は更に微妙な顔をしてその場を後にする。一方真ん中にいた父はいつもよりご満悦のように見えた。 「何…?」 違和感は更にました。 何故か、父の笑いが気持ち悪かったから。も、あるが、この親に育てられてきて父のしまりのない顔を見たのは孫を愛でる以外見たことがない。 さらに、嫌な予感がした。 それは、先ほどまで皆が覗き込んでいたテーブルの中央のモノを観たら更にました。 「おう、智雪まっていたぞ」 語調はとても陽気に等しい。 なんか、無性に腹立たしく感じ、ただいまという。 「ささ、座れ座れ、お前が来るのを心待ちにしていたんだ。」 そう言いながらテーブルの冊子を取り、向きを変え智雪に差し出した。
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