連絡と現実

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昨年、弟が結婚した。 お嫁さんは高校の後輩の美香ちゃん。 学生時代から付き合ってから五年、長かった交際の末の結婚だった。 真っ白なドレスに身を包んだ彼女はまるで天使のようで、その場に立ったことない私は、彼女のウエディングドレス姿がとてもまぶしく見えた28歳の夏。 その年の暮れに、可愛い双子の赤ちゃんを出産して、私は伯母になった。 可愛い可愛い双子の甥と姪。 毎日見ても飽きないくらい、ぷにぷにで愛くるしい瞳。 我が家の癒しのアイドルに私はメロメロだ。 「いつみても可愛いなぁ赤ちゃんは。」 それから半年、六月のはじめに私は毎日会う可愛いアイドルに毎度おなじみの言葉を掛ける。 「ほぼ口癖ですね、先輩」 「いいじゃない、可愛いだから、ねぇー?」 寝転がる双子に声を掛ける私に双子の答えはない。 彼女の私に対する呼び方は結婚した今でも変わらない。 同じ姓と家に住んでいても美香ちゃんは私を「先輩」と呼んだ。 どうやらもう癖らしく、しばらくは抜けなさそうである。 「先輩も早くいい人見つければ生めますよ」 答えのない双子の代わりに彼女は私にそういった。 「……そうね」 私はいつもそう返すのがいっぱいいっぱいだった。
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