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閉店後。静まり返った店内にオーナーの甲高い声が響いた。
「宗太郎くんに美春ちゃーん!お疲れさまっ!」
「お疲れさまです、オーナー。」
オーナーの貴子さんは5年前に旦那さんを亡くしてからこの店を守ってきた人だ。
40歳を超えてるはずなんだけど、タイトな黒いドレスに身を包む姿は30台前半にしか見えない。
「今日私がここに来た理由。2人ともわかってるわよね?」
「後任の料理長の件ですよね。」
宗太郎が固い顔をして答えた。
「そうなの。私としては2人のどちらかに料理長をしてもらいたいって思ってるのよ。」
予想はしていたけれど、心臓がドキドキと音をたてはじめた。
「2人はこの店をとっても大事に思ってくれてるし、若いけど腕もいいし。2人のどちらが料理長になっても大丈夫だって、私は確信してるのよ。それで…」
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