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ヤツの後姿をげんなりとした気持ちで見送りながら、人生最重量級の重い足取りで、キッチンの並びにある自分の部屋に寄り、濡れた衣服から学校の制服に着替えると、よろよろしながらキッチンで朝ごはんを食べようとした。
「おーおー、これがパンか?」
あたしが手を伸ばした瞬間、足音も無く現れたのは、小柄の男だった。
「あれ、お前も食べるの?じゃ、一緒に部屋行こうぜ!怪我人の世話どころか、何がどのスイッチだか何の道具なんだかわからなすぎて、オウなんかニヤニヤおかしくなっちゃってさ、困ってんだ。」
いい加減、堪忍袋の緒がぶっちーんと切れる音が、キッチンにこだました。
「あたしのパン、返しなさいよ、あんたなんなのよ!」
「わー、女が怒った!すっげー!」
「あんた、何喜んでるのよ、あたしは怒ってんだよ!」
勢いのまま、目の前のテーブルにバーンと両手をたたきつけ、そのまま男をにらみつけた。
あたしと同じくらいの年齢だろうか。
やたらと目力のある、ぱっと見外国人みたいな男子だ。
どれだけ鈍感男子なのか、ここまでしてやっとあたしの怒りが本物なのが伝わったようで、目力のある顔がゆっくりとしおしおし、顔全体でしょんぼり感を醸し出してきた。
「・・・喜んですいませんでした。」
ぼろぼろの衣服のまま、汚れた顔をしょんぼりさせて、パンの入った籠を両手で抱えながら、「すいませんでした」としおしおしている男子を前に、どんだけシュールなんだよと思いながら、二の句が告げないでいると、何か勝手に許されたと判断したのか、また表情が一変し、にっこり笑ってヤツは言った。
「謝ったから、パン、食べていいでしょ?」
「ダメっ!」
あたしは本気出した。だめだコイツ。こっから先が喧嘩だぞ。
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