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その水圧で真衣子を押しのけるようにホースが向けられたので、真衣子はおぼれる虫のごとく、温室の中に水圧のまま滑り込んだ。
「ダイ、オウ、マスターを並べろ。水で冷やすぞ。」
すると、声に応じた2人の黒こげ男が立ち上がり、それぞれの近くでぐったりしている黒こげ男3人を抱え上げ、ホースを持つ黒こげ男の前に並べた。
二人とも細身のシルエットにもかかわらず、数人の人間を一度にあまりにも軽々と持ち運ぶので、その怪力っぷりに、
(ああ、これは完全に夢だな。)
と、もう一度その場で目をつぶってしまおうかと思った真衣子だったが、彼女にかまうことなく、3人の黒こげ男は、倒れる3人の黒こげ男たちに黙々と冷水を浴びせ続けた。
ジゃーーー・・・。
「・・・て、限度を知れー!!」
「マスター・ロク、到着です。」
「・・・本当か。」
「俺の数式に狂いがあるわけない。」
「痛い、すごく染みます、水が。」
「うるせーよ、水かけてやるだけ、ありがたく思え。」
「・・・ごめんなさい。とりあえず、俺、手当てしたいんですけど。」
なんだこれ。
ほんとにウチの温室での光景か?
どえらい惨状の外見をものともせず、もくもくと水をかけ続ける男たちと、今にも病院行った方がいいくらいの怪我を負っている男たち。
そして、ずぶぬれにされながら、完全に無視されているあたし。
現状を全く把握できず、真っ白になるあたしの顔のまん前に、不意にまっすぐなまなざしをした黒こげ男(元気グループの方)が、グイッと顔を寄せてきた。
「突然のことで、申し訳ありません。私たちは旅の者です。差し支えなければ、一晩の宿をお借りできませんでしょうか?」
「ひいいっ!あの、あたし、これから学校がっ!」
だめだ、あたし、完全にパニくってる。
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