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カタコトと列車が走る。窓から切り抜かれた景色は美しかった。
晴れ渡る青い空。光る雲。草木のにおい。風に舞うタンポポの綿毛。
それ以上に風の音。
激しい風が泣いている。
悲痛で、すごく悲しくて、痛くて、そんな泣き声が強く胸を打った。
世界はこんなにも美しいのに、なぜ、おれはこんなにも醜いのだろう。
怪物は窓ガラスに写った自分の姿を見た。
うん。醜い。
だから怪物は少女の手を握った。強く。それでいて弱く。
少女は目が見えなかった。彼女の何も写らない瞳が怪物に向けられた。遠く、それでいて近く。
彼女には怪物の姿なんて見えないし、醜いことも知らない。
でも、きっと美しいと思ってる。
だって、こんなにも優しい手をしてるんだもの。
怪物がいった。
――せかいをみにいこう。
カタコトと列車が走る。
おしまい。
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