ちっちゃいおじさん伝説

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ちっちゃいおじさんの話というのは以下のものだった。 ーーーーーーーーーー 僕はね。君が想像しているような妖精や妖怪の類ではないんだ。普通の人間なんだよ。まあ、人間だったと言った方がいいかな。 生まれつきチビだった。ところが、中学に入ったとたん急に背が伸び始めたんだ。骨がギシギシと音をたてて成長していくのがわかるようだったよ。不思議だろう? お袋を抜き、親父を抜き、ついに2m近い大男となった。中学生だと言うのにだ。 当然、目立ってしょうがない。僕は元々控え目な性格だ。目立つのが嫌いだ。肩をすぼめるように佇み、頭を垂れながら歩いた。それでも目立つ。柔道やらないか?とかバスケやらないか?とか勧誘されるが、どうかほって置いて欲しいと思ったものだ。 多感な時を大男というトラウマを抱えながら過ごした僕は控え目な性格に拍車がかかり、社会に出ても、とにかく目立たないことだけを考えて過ごしていたんだ 。 会社で、またもや課長に怒られた夜、やけ酒を飲みながら僕は泣いた。課長は対照的に小男で、何かと僕を目の敵としていたんだ。小男コンプレックスだね。 目立たないよう自己主張のない僕は課長の理不尽なストレスのはけ口とされてしまったのさ。 僕はさらに肩をすぼめて、とにかく目立たないよう、目立たないよう歩いた。 どうか、神様、僕を小さく目立たないようにして下さい。と祈ったんだ。 やがて不思議なことが起こり始めたんだ。ファミレスで店員さんを呼んでもなかなか来なくなった。飲み会でも同僚が僕をからかわなくなった。同時に背が縮み始めたように思う。僕の身長は170cmになった。僕は喝采を挙げた。 ところが、そこで止まらなかったんだ。坂道を転げるように僕は小さくなっていったんだ。僕の身長は10cmになった。 このままいくと、僕はやがて消えて無くなってしまうんじゃないだろうか? 僕は今、そんな恐怖に怯えているんだ。 今はとにかく目立つように努力している。身長は10cmのままなんとか消えずに踏み止まっているよ。
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