ちっちゃいおじさん伝説

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まさか本当にいるとは思わなかった。 まさに、今、僕の目の前にいる。いくら目をこすって見ても幻ではない。 真っ白なテーブルにちょこんと体育座りしてアクビを噛み殺している。 年齢は50代といったところか? スーツ姿だが、ネクタイを緩めリラックスしている。 丁寧に櫛を入れ、ハゲをごまかそうとしているようだが、僕の目はごまかせない。 いや、そんなことはどうだっていい。 紅ショウガや楊枝、箸入れ、七味唐辛子の小瓶などが置かれた小物入れの横に当たり前のように座っている。 と思ったら、小さなオモチャのように動き、今は寝そべっている。 一体、なぜ?他の客は気がついているのか? それは僕が足繁く通う、某牛丼屋の店内のことだ。混雑が嫌いな僕は午後1時を回り、遅い昼食を取りに「いらっしゃいませ。」の機械音と共に牛丼屋の扉を押したのだった。
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