戦喪

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戦喪

飛び散る肉片、 感覚の途切れた腕が宙を舞う。 転がる白目、 何もかもが奪われた弱者が眠る。 自分の最期が見えるだろう。 我が国の栄光の為に、 父母兄弟そして子の為に、 この身をもって、敵を打ち砕かん。 一点の曇りも無い心からの万歳とともに。 この目に映り出す、 俺たちが掴めなかった幸福の日々。 子の子供たちが、 誇りに思えるような死を選ぼう。 光り輝く明日が見えるだろう。 父の背よ、母の胸よ、 我が妻子の愛しい、愛しい寝顔。 この身をもって、敵を打ち砕かん。 信ずる仲間達と、互いの溢れる涙も見ぬふりで。 一点の曇りも無い明日への万歳とともに。
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