キッカケ

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アドレスがない・・・。 いや、名前はある、登録してある。でも携帯番号しかない。 彼の機種はなんだっけかな? SMS機能をよく把握していないともるにはどうしようもなかった。 そもそも携帯番号のみで他の携帯会社のユーザー相手にショートメールが送れる不思議に彼女はついていけなかった。 しかも、ともるは詳細を事細かに伝える質で長文を打つから、ショートメールの文字制限をいとも簡単に越してしまう。 その事実を知らず、送信、案の定失敗、意味不のスパイラルにはまったまま、今ではこの機能は封印された。 とどのつまり、単なるメカ音痴である。 んもう、何で番号しかないの?実はあの人も携帯操作苦手だったのかな。 ともるが自分のものさしで考えると、結論はこうなる。 鬱々と画面の番号と天井を交互に見遣ってうなること五分。 うーん。もう、いいや。 半ば捨て鉢にダイヤルマークを押して耳に携帯を押し付けた。 仰向けになって天井に目を凝らしながらも意識は耳の方に向かう。 プルルルル、プルルルル きっかり四回目の呼び出し音の後、声が聞こえた。 「…はい。」 少し低めだが通るハスキーな声。 「あ、叶です。この前、飲み会やろうって誘った事務の叶です。」 「そんなに説明しなくてもすぐ分かりますよ」 クスクスと笑いを含んだ声に強張った肩の緊張がほぐれた。 やっぱり、顔の見えない電話は相手の声音で状況を判断しないといけないから難しい。
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