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「暑いですね 」言いながら、背広を隣の座席に掛けて向かい側に座る。
六月はジトジトとして雨ばかり降るので店は何処でも冷房を強めに効かせていたが、今来たばかりのこの人は体温の方が高いらしい。
柔い黒髪、フレームのある眼鏡はインテリを連想させ、人差し指で位置を直す仕草は妙に様になる。
スーツを着てるからなおのこと、出来る男に見えるのは仕方ないとして、乙女の妄想が具現化したような彼に周囲からの視線が痛く、こちらの方が居心地悪くなってしまう。
彼がアイスコーヒーを頼む間に、頬杖をついてミルクティーを飲みながらともるは更に観察を続ける。
こんなこと言うといやらしいけれど、細身の体躯で、長い脚、がっちりとはしていなくとも女性よりは広い肩幅、少し前のめりに話を聞いてくれる姿勢や、テーブルの上で組まれた長い指に男の色気を感じた。
注文を終えた彼がともるに向き直った。
「 さて・・・と」
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