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事の発端はともるの会社の同僚であり、仲良しでもある女の子四人で温泉付きの一泊旅行をした時だった。
みんなそれなりにはしゃいでいて卓球で盛り上がったり、温泉で胸の大きさを比べあったり、浴衣で土産物屋を回ったりした。
露天風呂は貸し切りと言って差支えない程、人の気配がなく、湯けむりが立ち上る様子や絵になるような風景に一同は感嘆の溜め息を洩らした。
人目が無いとなると、こっちのもので、自由気ままに手ぬぐい一枚を肩にかけて堂々と闊歩したり、風呂の中を泳いだりする。
ひと段落して全員が肩までお湯に浸かると、メンバーの中でも取りまとめ役の多恵が口を開いた。
「あぁー、営業の遠見さん、いつ見てもかっこいいなぁ」
「げ?!多恵もう狙ってんの?」
「人聞き悪いな、見守ってるって言ってよ」
「そうよ、遠見さんは女子社員みんなの目の保養なんだから。あたしは、遠見さんと同期の黒崎さんのが好みだけどね」
「出たっ!咲のチャラ男好き!」
「チャラ男じゃないもん、ムードメーカーだよ、市加のお目当て、笹井君が暗すぎるのよ」
「ばっか!笹井君の真髄を理解してないわね、彼の笑顔は超レアなんだから!!滅多に拝めないんだよ、てか、目当てじゃないし!!」
「忘れてました、市加には腐れ縁の幼馴染が居たんだね」
「はいはい、そこまでー。それよかさ、マジな話なんだけど、遠見さん、時たまこっち見てない?私が視線やると目を反らすんだけど」
「「ちょっと、自意識過剰じゃあ… 」」
「な、何をぉ?!!ともるはあたしの味方だよねっ?」
急に話を振られたともるはのぼせそうな頭で何とか答えた。
「うん、確かにこっち見てる。でも、それはあたしたちを通り越した奥の席にいる秘書の橘さんを見つめてるんだと思うよ。」
「裏切り者ぉ」
「裏切り者って…」
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