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「へぇ。叶さん、飲み会主催したりするんだ、意外だね」
これが、男性メンバーの大体の感想だった。それでも誘った全員が興味半分にしろ、お酒目当てにしろ、参加を快く承諾してくれたのは不幸中の幸いだった。
それにともるも思いがけない儲けものをしたのだ。
それは残業が少し長引いた日で、やっとの事で制服を着替え、帰り支度をしている時だった。
「お疲れ様。」
後ろで声がしたかと思うと、鞄を手にした佐々木チーフが入り口に立っていた。
「お、お疲れ様です。 」
どもりながら頭を下げて弱く微笑む。
「癒しだねぇ。今帰り? 」
「わ、私ですか? えと、はい、今から帰るとこです。 」
「じゃあ、ここ閉めるから入り口まで一緒に出よう。」
ともるは小走りで佐々木チーフのいる扉まで向かった。
チーフは事務所の電気を消して、戸締りをする。
鍵を閉めるチーフの背中をぼーっと見ている。
運動をしていただろう、がっしりとした肩幅だとかワイシャツ越しにでもわかる背中の筋肉。腕まくりした裾から伸びるたくましい腕に、自分より頭2つ分も高い身長。
あー、この人に抱きしめられたらどんな感じがするんだろう。
すると急にチーフが振り返って噴き出した。
「何?眠たいの?」
そうか、自分の頬が緩んだ顔は眠たい顔なのか… 。
二人して並んでエレベーターまで歩く。
横から盗み見たチーフの顔は、程よく高い鼻梁、笑うと目尻が下がる優男の印象なのに、その奥の瞳には力強さがある。
ふわりと鼻腔をくすぐる香りは香水…ではなく整髪料だろうか、ともるは大人の男性を意識せずにはいられない。
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