10人が本棚に入れています
本棚に追加
しかし――表面の風化も進んでいるため、そう簡単に目的の情報が手に入るわけはない。
そもそも情報がそこにあるのかすら疑問だった。
「……ん?」
目を凝らして壁面の文字を追っていたが、微かに、視界に違和感を覚えた。
その違和感の正体は探すまでもない。
壁を這う無数のヒビ、その中に一つ直線を成しているものがあったのだ。
立ち上がりそれに近付く僕。
指で触れてみれば分かる。
それはヒビなどではなく、人の手で加工を施された扉の縁のようだった。
吸い込まれるようなその隙間を覗いてみると、僅かに奥行きを感じる。
「…………」
鞘から剣を抜き放ち、その隙間に差し込んでみるが、数センチほどで奥の壁にぶつかったようだ。
それを隙間の上から下まで繰り返したが引っ掛かるものはなく、まるで開く気配がしなかった。
厳然と目の前にそびえ立つ壁は、僕の力でどうこうできるような生易しいものではないとはっきり分かる。
そこを離れ、今度はその近くに目を凝らしてみる。
ここに扉があるというのなら、開閉のためのなんらかの装置もまた近くにあるはずだ。
右の壁、左の壁には見当たらず、僕は地面に這いつくばって床の亀裂を凝視する。
最初のコメントを投稿しよう!