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「これか……?」
床と床の切れ間に一箇所、土ぼこりの溜まった窪(くぼ)みがあるのに気がついた。
土をかき出してみると、それは取っ手のようだった。
手を入れて、上に持ち上げてみる。
「あ、開いた」
窪みの付近が蓋のようになっていて、それが取れると二つのダイヤルが並んでいた。
ダイヤルの表示は形の違う模様が十個並んでいる。
おそらくはそれぞれが、今で言う数字のような役割となっているのだろう。
これをあわせなければ扉は開かないと、そういうことらしい。
このヒントも壁にあるのか……?
と、何気なく手にした蓋をひっくり返してみると、そこに二つの模様の描かれた紙が張り付いていた。
国の命令できた研究者が、残していったものだろうか?
しかし、どうにしろ運がいい。
書かれている通りの模様をダイヤルに合わせると、重々しい音が広間に響いて扉は開かれた。
僕は息を飲んでその光景を見つめていた。
これが数千年前の技術だということを、ふとした拍子に忘れてしまいそうだ。
扉の向こうは下りの階段となっており、少し覗くと階段の突き当たりで左右に分かれていた。
普段、風雨に晒されていないためか損傷も少ない。多少は歩きやすくもあるだろう。
――誰も、最深部にたどり着いたことのない遺跡。
恐らくはここから、苛烈な罠が待っている。
よかったと、僕はそう思う。
だからこそ僕は必要とされるのだから。
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