3.乖離(かいり)

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「これか……?」 床と床の切れ間に一箇所、土ぼこりの溜まった窪(くぼ)みがあるのに気がついた。 土をかき出してみると、それは取っ手のようだった。 手を入れて、上に持ち上げてみる。 「あ、開いた」 窪みの付近が蓋のようになっていて、それが取れると二つのダイヤルが並んでいた。 ダイヤルの表示は形の違う模様が十個並んでいる。 おそらくはそれぞれが、今で言う数字のような役割となっているのだろう。 これをあわせなければ扉は開かないと、そういうことらしい。 このヒントも壁にあるのか……? と、何気なく手にした蓋をひっくり返してみると、そこに二つの模様の描かれた紙が張り付いていた。 国の命令できた研究者が、残していったものだろうか? しかし、どうにしろ運がいい。 書かれている通りの模様をダイヤルに合わせると、重々しい音が広間に響いて扉は開かれた。 僕は息を飲んでその光景を見つめていた。 これが数千年前の技術だということを、ふとした拍子に忘れてしまいそうだ。 扉の向こうは下りの階段となっており、少し覗くと階段の突き当たりで左右に分かれていた。 普段、風雨に晒されていないためか損傷も少ない。多少は歩きやすくもあるだろう。 ――誰も、最深部にたどり着いたことのない遺跡。 恐らくはここから、苛烈な罠が待っている。 よかったと、僕はそう思う。 だからこそ僕は必要とされるのだから。
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